不意に、思考がぐらりと揺れた。どうしてか宮橋は捜査中ずっと、その少年に重点を置いていた気がするのだが、何かを忘れてしまったかのように集中力が霧散してしまう。

 数歩離れて藤堂が電話をかけ始める中、宮橋はすぐに三鬼へと向き直っていた。

「三鬼、どうせお前も付いてくるんだろ? 連続バラバラ殺人事件の容疑者を、これから確保する」
「容疑者って、そいつ十六歳の虫も殺せねぇようなガキだろ? あいつが、たった一人でやったって言うのか?」
「質問は一切受け付けない。僕たちが、今すべき事は、『次の殺人が行われる前に、容疑者を捕まえてこの事件を終わらせる事』だ」

 宮橋は、質問を拒絶するように「犯行の件については、あとで本人に訊けばいい」と、シルバーの携帯電話をズボンの後ろポケットに入れた。三鬼が珍しく文句も続けず「分かった」とあっさり答えて、こう訊く。

「それで? その口振りからすると、容疑者のガキはこの辺にいるんだな?」
「ああ、そうだ。さっき直接話した」

 電話を終わった藤堂と、一部始終を見守っていた真由が、あっさり受理した様子を意外だと言わんばかりに瞬きする。