「そうですね、難しいものがあります。でも俺は、今の立ち位置が結構気に入ってます。少し前までは分からなかったけど、相棒の役割や重要性が見えてきて、いつの間にかその人と一緒に仕事しているのが当たり前みたいな、そんな感じですかね」

 二年先輩としての立場から語られた話につられて、チラリと目を上げてみると、うまい説明が思いつかないとでも言うように、困った笑みを浮かべて頬をかいている藤堂がいた。

 真由は携帯電話をポケットにしまうと、「藤堂さん」と呼んだ。視線に気づいた彼が、きょとんとした様子で見つめ返してきたので、正直な思いでこう尋ねてみた。

「それって、堅苦しい理由とか、要らなくてもいいんですか?」

 問うてすぐ、藤堂が大きな両目をパチパチとさせた。「まぁそりゃあ――」と独り言のように呟いた彼の瞳に、再び前向きな力が戻る。

「うん、そうですよ。俺たちは、せいいっぱい自分なりにサポートすればいいんです。俺は先輩に『ついてこい』って言われたから、頑張ってついて行っても文句を言われる筋合いはないです」
「あっ、私も『僕について来い』って宮橋さんに言われたんでした。じゃあ精一杯ついていく事にします!」

 なんだか、ぐるぐると勝手に一人で悩んでいたのがおかしく思えた。そもそも、まだコンビとして組まされて一日も経っていないのだ。自分が、すぐ三鬼や藤堂のようにスムーズに動けるはずもないだろう。

 小楠に紹介された当初は、コレ無理なんじゃないかなとも感じていたのに、出来るだけ長く相棒としてあれるよう頑張りたいという気持ちがあった。まだ全然使えない新米刑事だというのなら、彼の役に立てるよう成長したい。