「宮橋、彼女は今日からパートナーになる、橋端真由君だ」

 どうして、小楠が『橋』という単語を強調した。

 すると宮橋が、途端に椅子にもたれていた背を起こして、はじめて興味を持ったような目を向けてきた。どこか年齢不詳の、美麗で大人びた顔に好奇心が浮かび、室内に友好的な空気が漂う。

「へぇ、君の名字にも『橋』がつくのか」

 真由は、よく分からないまま小楠の方を見やった。食いついてくると思っていた、というように彼が「よし、いけるぞ」と小さくガッツポーズしたのが見えて、もしやそれだけで長続きしないパートナーにあてられたのでは、という疑いが脳裏を掠めた。

「同じ漢字がついた女刑事は初めてだよ。なかなか面白い偶然じゃないか。君もそう思うだろう?」
「えぇと、それはどうも……?」

 気圧されつつ答える間も、宮橋が面白そうに観察してくる。まるで子供みたいだ、と真由は思った。

 宮橋の端正な顔に浮かぶその表情や、好奇心に満ちた眼差しは若く見えた。L事件特別捜査係は、十数年前に設立したと聞かされていたので、自分よりも一回り年上という計算になるだろう。