「よくやった藤堂」
続いて、宮橋に言葉をかけられた藤堂が、困惑した表情を向ける。
「宮橋さん、あれはなんですか……?」
「何を見た?」
「携帯電話に、影がよぎったような気がして、そしたら黒い爪をした、長い指が……」
藤堂は言葉が続かず、不安に揺れる瞳を落とした。そっと視線をはずした宮橋が「そうか、君にはそう見えたのか」と独り言のように呟いた声が、寂しい響きをしてこぼれ出たのを聞いて、気がかりな表情を浮かべて視線を戻す。
パチリと目があった宮橋が、考えるように数秒ほど沈黙し、表情のない顔で「藤堂」と呼んだ。
「錯覚だ。忘れろ」
宮橋はそう告げた。ふいと彼から顔をそむけると、ガタガタと怯えて涙を浮かべているマサルに歩み寄る。先程の騒ぎで、彼から受け取り損ねていた携帯電話を手にすると、操作しながら疲労を滲ませつつ髪をかき上げる。
藤堂は助言を求めるように、先輩である三鬼へと視線を移した。しかし、彼は気付いている様子ではあったものの、視線を受け取ってくれなくて、困惑したまま隣にいる真由を「大丈夫ですよ……」と言って気遣った。
続いて、宮橋に言葉をかけられた藤堂が、困惑した表情を向ける。
「宮橋さん、あれはなんですか……?」
「何を見た?」
「携帯電話に、影がよぎったような気がして、そしたら黒い爪をした、長い指が……」
藤堂は言葉が続かず、不安に揺れる瞳を落とした。そっと視線をはずした宮橋が「そうか、君にはそう見えたのか」と独り言のように呟いた声が、寂しい響きをしてこぼれ出たのを聞いて、気がかりな表情を浮かべて視線を戻す。
パチリと目があった宮橋が、考えるように数秒ほど沈黙し、表情のない顔で「藤堂」と呼んだ。
「錯覚だ。忘れろ」
宮橋はそう告げた。ふいと彼から顔をそむけると、ガタガタと怯えて涙を浮かべているマサルに歩み寄る。先程の騒ぎで、彼から受け取り損ねていた携帯電話を手にすると、操作しながら疲労を滲ませつつ髪をかき上げる。
藤堂は助言を求めるように、先輩である三鬼へと視線を移した。しかし、彼は気付いている様子ではあったものの、視線を受け取ってくれなくて、困惑したまま隣にいる真由を「大丈夫ですよ……」と言って気遣った。