周辺一帯にいた人々が、音に気付いて振り返った。

「一体何があったんだ!?」
「分からん、爆発でもしたのか?」
「危険ですので、皆さん下がってくださいッ」

 騒ぎだした一般市民と警察官を脇に、宮橋が苦々しい顔で「――随分と大きくなったもんだ」と呻る。

 一部始終を見ていた真由たちは、言葉も出ずに潰れたその軽自動車を見つめていた。もし藤堂が自分から携帯電話を引き離さなかったら、こちらがそうなっていたのだろうかと想像して、まさかと思いながらも血の気が引いてしまった。

 同じことを考えたのか、目撃者となった三鬼、藤堂、そして、壁に座りこんでいた田中と竹内の二人も、茫然と視線を釘づけたまま動けないでいた。

 第二の事故かと推測される中で、警察関係者が潰れた車から人々を遠ざける声が飛び交い、現場は騒然としていた。

「おいおいおい、一体どういう事だよ」

 ようやく、喉から絞り出すようにそう言った三鬼の声に、言葉を返す者はいなかった。宮橋が彼の前を通り過ぎ、顔色が悪い藤堂の隣に立つ真由の正面を足を留めて、ギロリと睨みつけた。