すると、小楠が先に動いてこう言った。

「真由君はとても優秀だ。仕事上のルールは守る、――そうだろう?」
「あっ、はい! 守りますとも!」

 小楠に睨まれて、真由は慌ててそう答えた。

 それを見た宮橋が、怪訝そうに片方の眉を引き上げた。どこか探るように目を細めて、まじまじと真由を見つめる。

「ふうん、なるほどね――じゃあ、これから僕が言う事を守れるかい? その一、僕の命令には絶対従う事。その二、勝手な行動を取らない事。その三、無駄な質問をしない事。どれも仕事の邪魔になるからね」

 わざわざ指を一つずつ立てて、宮橋が上司のような口調で告げてきた。

 真由は、反論するなという小楠の顔が目に入って、反論したい気持ちをどうにか堪えた。彼の貫録ある瞳が『黙って頷くように』と言っているような気がして、喉の奥から「はい」とだけ絞り出して唇を引き結んだ。

「よろしい」

 そう言った宮橋の顔に、微笑が戻った。どこか納得した様子で足を組み直す様子を見て、小楠がややほっとしたように息をつき、改めて彼に真由を紹介した。