「い、いや、その、俺も携帯電話は持っていな――」
「持っているぞ。Tシャツの内側に着けている、肌着のポケットに隠してる」

 まるで空気を読まないみたいに、宮橋が呑気な笑みを浮かべてそこに指を向けた。

 途端にマサルが目を剥いて「あんたッなんで分かんだよ!?」と言い、まるで名コンビの如く三鬼がニヤリとして「よっしゃ、でかした宮橋!」と答えて、シャツを脱がすべく掴みかかる。

「ちょッ、三鬼先輩この子も怖がっていますからッ」
「宮橋さん、なんで三鬼さんを煽るんですか! ひょっとしてお二人とも、息がぴったりなんじゃないですか!?」

 真由も藤堂に加勢して、両脇から三鬼の腕を取って阻止した。

 すると、いつものように荒っぽく振りほどこうとした彼が、直前に力の弱い真由の細腕に気付いてピタリと抵抗をやめた。宮橋と同時に「聞き捨てならねぇな」「その意見には賛同出来ないな」と言って、二人の後輩兼相棒を振り返り、顔を顰める。

「言っておくが、俺はこいつが大嫌ぇだ」
「いいか、僕と彼の相性は最悪だ」

 互いに目も向けないまま、近い距離から指を向け合って忌々しげに断言した。真由は呆気ら取られたし、藤堂もぽかんと口を開けて「そういうところが、息がぴったりだと思う部分なんですよ」と呆けた声で呟いた。