見えない何かにハンドルを取られて、真っ直ぐ突っ込んでくる一台の大型トラックを想像した。確かに宮橋の言う通り、運転手がブレーキを掛け続けていたから、田中たちは助かったともいえるだろう。

 先程の一件のせいで、ケンという少年が重症のまま行方不明になっている。その事実を改めて思ったら、『意図的に全員事故死することになるぞ。多くの犠牲者が出てもいいのか』と忠告していた、宮橋の言葉が耳に蘇ってきた。

 頭の中で事故の映像が繰り返され、最悪のパターンに変換されながら勝手に回想が続いた。見えない何かが操作する大型トラックが、もしこの捜査の最前線に立つ宮橋の後ろから、減速する事なく突っ込んだとしたら……。

 そう考えて、三鬼はゾッとした。

「おい、みやは――」

 こちらから離れていく、ピンと伸びた細い背中に声を掛けようとした時、よれよれになって汗ばんだシャツの胸ポケットで、消音モードにしていた携帯電話が震え始めた。