三鬼が仏頂面で見つめる中、宮橋は視線を返さずに「佇んでいても、時間は待ってくれない」と冷静な口調で切り出した。

「ただの事故だった、だから君たちは何も言わなくていいんだ。藤堂にも、あとでお前の方から口止めしておけ。…………戯言とされるのは僕だけでいい」

 歩き出した宮橋が、通り過ぎる際に視線をそむけたまま、三鬼の肩をポンと叩いた。二人のやりとりを見守っていた真由は、一瞬その横顔がひどく寂しいものに思えて、状況も分からぬままパートナーである彼のあとを追っていた。


 肩を叩いて行った宮橋を目で追い駆けて、三鬼はその背中に嫌な予感を覚えた。奴は自分の勘というやつを信用している。また何かやらかす気だな、と、彼に勝手に立ち動かれる苛立ちも込み上げた。

 しかし、不意に、つい先程の騒動で駆けて向かっていた時、伸ばした手の先で、田中たちの姿が大型トラックにかき消された光景が思い起こされた。それを目の前にした戦慄が蘇って、三鬼の胸を冷たく貫く。