宮橋が「分かった」と言って、混乱した様子の田中の肩をそっと叩いた。続いて、苛立って拳を固める竹内の肩をポンポンと叩いて立ち上がる。たったそれだけで少し落ち着きを取り戻したような、まるで憑き物でも落ちたみたいな表情を浮かべて、二人はどことなく不思議そうに彼の動きを目で追う。

　真由は、振り返った宮橋と目が合って、知らず背筋を伸ばしていた。彼が歩み寄ってくるのが見えた途端に、怖気づいた事を怒られるんじゃないかと咄嗟に思って身構えたら、通りがてら同じように肩をそっと叩かれた。

「ひとまず、突っ込んできたトラックについては考えるな。さっきも言ったが、ハンドルを取られたんだろう」

　そう言った彼が、目の前を通り過ぎて三鬼の前に立った。

「三鬼、お前はトラックの下を覗いて見ていたんだろう？　それから藤堂もだ」

　確認のように尋ねられた三鬼は、場が悪そうな顔をして斜め下へと視線を逃がした。察して確信しているのなら、わざわざ訊くなよな、と不満を口の中で愚痴る。