「おいおい、小楠警部。まったく勘弁してくれよ。それ、何十人目だい?」

 捜査一課の問題児と言われている美貌の男、宮橋が「やれやれ」とわざとらしく肩をすくめて見せた。

 王子様みたいな人だと思っていた真由は、その馬鹿にしたような態度にむっつりとした。私だってこんなところに配属されるのは不本意だったんだけど、という視線を送る。

 宮橋は、呆れたような顔で上司と新人を交互に見やった。気分が台無しになったと言わんばかりの態度で椅子の背にもたれると、頭の後ろに両手をやって楽な姿勢を取った。

「何度も言っているように、僕に相棒は必要ないよ。どいつもこいつも使えない連中ばかりで、つまりは足手まといなんだよ、小楠系部。僕の忠告が聞けないような奴は、特にごめんだね。それが命とりにだってなる」
「うむ……。しかし、ウチでは単独行動は許されない。分かっているな?」

 宮橋と小楠が、互いの腹を探るように瞳の奥で睨み合った。気圧されそうな雰囲気に、真由は息を呑んでしまう。