「そうは言うけどな…………。ブレーキに対抗するように、タイヤだけが強い力で回され続けたって事か?」
「――そんなの、到着したばかりの僕が知るはずがない」

 ふいと顔をそらした宮橋は、血が染みこんだタオルを頭に当てる田中と、その隣で伸びた足先に血を滲ませる竹内へ視線を向けた。

「田中、竹内、大丈夫か?」
「僕は大丈夫です。でも、まだケン君が見つかっていなくて……」
「俺は足をやられて、しばらくは動けそうにない」

 がっしりとした筋肉質の大柄な竹内が、悔しさに顔を歪めて言葉を吐き出した。
田中はタオルを当てたまま、片目だけでしっかりと宮橋を見上げて、言葉を続けた。

「他の二人は、なんとかかすり傷ですみました。今、ケン君の捜索と事故の対応に協力してもらっています」
「そうか。救急車が来たら、お前も乗っていけ」
「はい……。僕はここでリタイアですね、すみません」

 申し訳なさそうにはにかんだ時、ふと、田中の顔に恐怖するような影が差した。宮橋が僅かに片眉をピクリと動かせて、それから膝を折って彼と目線の高さを合わせる。