交通量が多い時間帯のせいか、事故で車の動きが一部規制されたばかりの通りは、ひどく混雑して人でごった返していた。向かう現場近くは、どうやら被害者と救出者でまだ騒がしくもあるようで、居合わせた人々の多くが野次馬のように立ち止まってもいる。

 騒がしい通りを、彼がまるで空気のようにすり抜けて行く中、真由は人にぶつかりながらも、人々の頭から飛び出た長身の彼の茶色い後頭部を見失わないよう必死に追った。警察官が立ち入りを規制している事故現場に足を踏み入れて、正面から問題の場所を眺めところで、真由は思わずヒュッと息を呑んだ。

 目に飛び込んできたのは、車から降りた時にも見えた、ガラス張りの店内から突き出た大型トラックだった。信号待ちで縦列していたらしい車が、トラックに押されて様々な方向へ押されている。

 それを目に留めた宮橋も、厳しい表情を浮かべていた。数秒して「行くぞ」と固い声を出して早足に歩き出し、真由もそのあとを急いでついていった。