「…………なるほど。これは想定以上の速さというか――まずいな」

 宮橋が、独り言のような呟きをもらした。それを尋ねようと口を開きかけた真由は、車が急に進路方向を変えてカーブを切られ、短い悲鳴を上げた。

 またしても走行の暴走に入るのかと文句を言おうとした時、目線を前方へと戻したところで、自分がすっかり電話に気を取られていた事に気づいた。そこにはサンサンビルに連なる大通りへ入れるはずの交差点があり、入口が既に事故現場用のブロックで封鎖されていた。

 ハンドルを切ってそこを避けた宮橋が、スピードを落とさないままスポーツカーを国道へと無理やり戻して、サンサンビルのある大通りと並行して敷かれている国道を数分ほど走った。それから迂回するようにして道を折れ、トラックが突っ込んだと騒ぎになっている建物から、五メートル手前の封鎖口で車を停車させる。

 やってきた警察官に警察手帳を見せつつ、宮橋が慣れたようにシートベルトを外す隣で、真由は車窓の先を見つめて「何これ!」と驚いた声を上げていた。