聞き慣れた着信音とは違い、選挙カーがめいいっぱいボリュームを上げた時に似た耳障りな軋んだ爆音に近かった。通りの人々が顔を顰めて、音の発生源を探すように辺りに目をやる。

 音は何重にも連なるように轟いており、位置は特定出来そうにもなかった。マサルが自分の身体を抱きしめて震えるそばで、他の捜査員たちは気付かない様子で「なんだ?」と音に耳を傾けていた。

『三鬼さん、なんですかこの音? 電話の着信音にしては大きいような……』

 田中が辺りを見回して言う、三鬼は「分からねえ」と警戒心を露わに通り全体を睨みつけた。またしてもマサルが怯えている様子に目を留めた藤堂も、すぐに田中大通りへと視線を戻して周囲を見渡した。

 続く着信音は、なかなか鳴り止まなかった。建物に反響して窓ガラスを震わせるほどの爆音の嵐に、何人かの短気な連中が「煩ぇぞッ」と怒鳴り散らす声が上がり、小さなざわめきが不安を伴って大通りに広がっていく。