三鬼は携帯電話を取り出すと、そこに同僚の名を確認して通話ボタンを押して耳にあてた。
「こちらは三鬼だ。田中か、どうした?」
彼は賑わう大通りからの喧騒に負けない声量で、一年下の後輩に問い掛けた。田中は質素な顔をした気の優しそうな男で、捕まえた犯人の話も一生懸命に聞いて涙したり、少し間の抜けたところもあるが、柔軟に仕事に対応出来る刑事でもあった。
『三鬼さん、ケンという少年を保護している田中です。今のところ何も問題はなさそうですし、互いの状況確認のためにも、一旦合流した方がいいかなと思ったんですけど、宮橋さんからは、そのへんについて何か聞いてます?』
「署から出る前の話だと、しばらくはバラけた方がいいとしか言ってなかったな」
『かなり人通りも多くなっていますし、一時だけ合流しても大丈夫なのであれば、そうしたいんですけど。――どこにいます? 僕はサンサンビル西の交差点辺りです』
それを聞いた三鬼は、柵から身を乗り出して、大通りの西側にある巨大な高層ビルの方を確認した。交差点は、ここから百メートルと少ししか離れていない。
「こちらは三鬼だ。田中か、どうした?」
彼は賑わう大通りからの喧騒に負けない声量で、一年下の後輩に問い掛けた。田中は質素な顔をした気の優しそうな男で、捕まえた犯人の話も一生懸命に聞いて涙したり、少し間の抜けたところもあるが、柔軟に仕事に対応出来る刑事でもあった。
『三鬼さん、ケンという少年を保護している田中です。今のところ何も問題はなさそうですし、互いの状況確認のためにも、一旦合流した方がいいかなと思ったんですけど、宮橋さんからは、そのへんについて何か聞いてます?』
「署から出る前の話だと、しばらくはバラけた方がいいとしか言ってなかったな」
『かなり人通りも多くなっていますし、一時だけ合流しても大丈夫なのであれば、そうしたいんですけど。――どこにいます? 僕はサンサンビル西の交差点辺りです』
それを聞いた三鬼は、柵から身を乗り出して、大通りの西側にある巨大な高層ビルの方を確認した。交差点は、ここから百メートルと少ししか離れていない。