「いいか、この事件が終わったら、これまでやってきた事を全部吐いてもらうからなッ」
「先輩、少し落ち着きましょうよ。ほら、また煙草でも吸ってください」

 そう藤堂に宥められながら、テラスの柵まで持って行かれる三鬼を見て、若い刑事たちは感心した様子で呟いた。

「さすが藤堂、スポーツ一筋なのに脳筋を感じさせない仔犬属性男子だな」
「あの三鬼さんが、拳骨の一つも殴り返さないもんなぁ」
「俺が同じ事やったら、ざけんなって言われて即拳骨もんだよ」
「多分さ、あの人、宮橋さんを拳振って追い駆け回しているから、拳骨か蹴りが癖になっているんだと思う」

 つまり問題児の同期の面倒役を任されていたせいで、思わぬ副産物がオプションに付いてんだなぁ……と彼らはしみじみと口にした。

 
 藤堂に邪魔された三鬼は、このテラスで二本目となる煙草に火を付けた。吸う気はないと言ったのに、二年目となるこの素直な後輩に「まぁまぁ、一本どうぞ」と人のいい苦笑を浮かべられて火の用意までされたら、断れなくなった。