「おい。お前、与魄智久を知っているよな？」

　唐突に問われたマサルは、怯えた瞳で向かい側に立つ三鬼を見上げた。後輩組である藤堂たちは、困惑の色を浮かべはしたものの、このチームの班長である先輩の彼の様子を見るように口を挟まず、引き続き辺りを注意深く窺う。

「他にも色々と、ちょっかいを出してカモにしているのが何人かいるだろうが、与魄とかいうガキには、中学時代からしつこく付きまとっているらしいな。一体これまで、どんな事をしてきたんだ？」
「あ、あいつとは中学校からの付き合いで、ただのクラスメイトですよ……い、今の事とも関係がないし…………」

　答えるマサルの目が、再び小さな困惑を浮かべてそらされる。先程から周りの大人たちに智久の事を訊かれるたび、どうして今のタイミングでその名前が出てくるのだろう、という心底理解し難い戸惑いの表情を浮かべていた。

　とはいえ、ある意味では自身の都合が悪くなる事を避けるため、口を閉ざしているとも分かっている。だから、その行為を見て取るたび、三鬼は『不良のガキ嫌い』もあって苛立ちは三割増しで強まり、ピキリと青筋が立った。