時間が過ぎるに従って人や車が増え、歩道や道路は、混雑のピークのように埋め尽くされた。ここは都会のド真ん中だ。買い物へ寄る者もいれば、飲食店に入る者もいるし、そのままサンサンビルを真っ直ぐ抜けて駅へと向かう者も多くいた。

 車の数は大通りいっぱいになり、信号で停まるたびに渋滞が起こる。学校帰りの学生や、会社での勤務を終えた大人たちが、一本道の大通りをぞろぞろと進んでいく姿がぐっと増えて、気付くとサンサンビルの大型モニター画面の時刻表示は、午後の五時四十五分を打っていた。

 しばしぼんやりと、人と車がごった返す大渋滞の様子に目を留めてしまっていた三鬼は、どこからか携帯の着信音が鳴り響く音を聞いた。目の端で、椅子に小さく縮こまって座っているマサルの両肩が、びくりと震えたのが見えた。

 ずっとだんまりを決め込んでいる不良少年に苛立ちを覚え、彼の座るテーブルへと歩み寄った。白い鉄製のテラステーブルには、藤堂が彼のために買ってきたミルクコーヒーが、一度も手を付けられていない状態のまま置かれていた。すでに中の氷はすべて解け、持ち帰り専用の紙カップは大量の汗をかいている。