「張っている時は、吸わないんじゃなかったんですか?」
「……もう二時間は吸ってなかったんだよ」
「三鬼先輩は宮橋さん絡みだと、いつもタバコ吸っちゃいますよね」

 三鬼は何も言い返せなかった。藤堂が表情を少し不安に曇らせながら、ちらりと捜査員たちに囲まれる少年を確認するのを見て、同じように視線をそちらへと流し向ける。

 同僚の捜査員たちは、しきりに辺りの様子を窺っていた。ガラス窓の向こう店内にいる数少ない客たちが、時々不審そうな顔をして、スーツ姿のこちらに視線を送ってきていた。

「俺、宮橋さんと本格的に現場に立ったのって、二年前に配属されてから今回が二度目なんですけど、――ほら、いつもは俺たちが捜査をしている時に、通りすがり偶然近くに居会わせてヒントを言って解決、みたいな感じだったじゃないですか?」

 実に不思議ですよね、と藤堂は首を捻る。

「結構自由に動けて、普段何してんのかも分からない『L事件特別捜査係』の存在もそうですけど、あの人って一体何者なんですか? 俺の同期とかもそうですけど、みんな不思議がってますよ」