煙草をやっているせいで、マサルの歯は黄色くなっていた。大人に比べて、小柄で線が細いところは少年のもので、完全に怯えきって小さくなっている様は、堂々と映っている写真とはまるで別人に見えた。

 三鬼は、柵に尻を乗せるように身を預けて、ふんっと鼻を鳴らした。そもそも彼は、非行少年が大嫌いである。藤堂が「あんまり睨まないであげてくださいよ」と注意していなかったら、ピアスと学生ズボンの後ろポケットに入っていた煙草の説教を、問答無用で始めていたに違いない。

 宮橋のせいで苛々も増して、マサル少年から目を離して、ポケットからタバコの箱を取り出した。人や車が多く行きかう通りを眺めやったものの、更に暑苦しさを感じて顔を顰めてしまう。

「三鬼先輩、宮橋さんはどうでしたか?」

 藤堂が隣にきて、そう尋ねてきた。三鬼はタバコを一本くわえたところで、後輩である相棒に視線を向ける。

「署を出る時と変わらず、与魄っていうガキを早急に探し出せ、だと」
「今まさに、その最中なんですけどね……」 

 乾いた笑みを浮かべる藤堂の横で、三鬼はタバコに火をつけた。それを見ていた彼が、人の好きそうな顔をきょとんとさせる。