三鬼は苛立っていた。木材質の柵に寄りかかった姿勢のまま、一方的に切られた携帯電話をしばらく見下ろし、それから荒々しくワイシャツの胸ポケットに突っ込んだ。

 あまりの暑さに、長年の付き合いがあるスーツの上着を、近くの駐車場に停めてある愛車に脱ぎ捨てていたくらいである。昔から慣れない締めつけ感のあるネクタイをゆるめながら、忌々しげに後ろを振り返った。

 サンサンビル前に堂々と構えられている『カフェ・ハービー』のテラス席には、藤堂を含める四人の捜査員が円を作って立っていた。その中央にある丸いテーブルの椅子には、オレンジのシャツと制服のズボンを着た少年が座っている。

 少年の名前は、マサルといった。例の不良メンバーの一人のN高校の一年生で、パチンコ店の前に座り込んでいたところを発見して保護に至った。

 短くカットされた天然パーマの頭は額の左右が刈り上げられ、耳には銀色の大きなピアスがつけられている。細い瞳、少々厚ぼったい唇、やや膨れた四角い顔。しっかりと筋肉がついた体格は、十六歳と言われてもしっくりとこない。