「児童文学や小説だと、そういう流れのお話がほとんどですよね」
「まぁ、実際のところは妖精以外にも色々とあるけれど」

 宮橋は、進行方向を見つめたまま「そう、ただの童話さ。僕が知っている中で、魔術師が出てくる滑稽な一つの『話』をしてやろう」と前置きして言った。

「とある大富豪一族に、伯父の狸野郎がいて、目と感覚が良い魔術師みたいな詐欺師だった。彼は二つの世界を騙して『物語』を捻じ曲げ、『取り替え子』を帰さずに、攫われた子供を母親の腹の中に戻した」
「もう『狸野郎』の説明時点で、色々とすごく雑ですね……。そもそも生まれていた子の方も無事で、攫われていた子も帰ってきて皆一緒って事は、滑稽でもなんでもなくて、大団円のハッピーエンドじゃないですか」
「そうだな、これで童話はハッピーエンド。その魔術師みたいな男は勝手に満足して死んで、本来は二人兄弟であるべきなのに、彼の思惑通りそこには『三人の兄弟』が残された」

 一瞬、語る宮橋の声色が自身を嘲笑うみたいに投げやりになって、その横顔が苛立ちと刹那に小さく歪んだ気がした。