変だなと思って視線を上げると、珍しくポケットに両手を突っ込んで、黄色いスポーツカーに向かって歩いている宮橋の後ろ姿があった。慌てて追い駆けた時、スーツのジャケットの襟元が先程よりきちんと整えられている気もして、またしても首を傾げてしまう。

 車に乗り込んで、宮橋から預かっていた彼の携帯電話を手渡した。カヨにろくな挨拶も出来ないまま出てきてしまったのを思い出して、申し訳なくなる。

「というか、宮橋さんがサクサク話しを進めたせいで、ろくに覚えていない……」

 私の頭はどうなってんだ、ポンコツか、と真由は呟いてしまった。

 与魄智久という少年の祖母、カヨの義兄が奇妙な自殺を遂げて、彼女の夫も九年前に眠るように亡くなった。それを事実確認のようにあっさりと聞き出して終わったわけだが、結局のところ、その中で彼が何を確認したかったのか分からない。

 時刻は五時十ニ分。陽が傾き始め、外は日差しが少し弱まっている。頭上に広がる空はまだ明るいが、太陽の光はこれから橙色への変色を始めようとしているように思えた。