途中、長身だが平均より細身で体力がなさそうな中年男が、小楠の姿に気付いて慌てて机から足を退けた。その隣には、幼い顔立ちをした若い捜査員が立っており、「お疲れ様です、警部」と挨拶をしてきた。

「ああ、お疲れさん」

 小楠は疲れたように言い、ちらりと目を向けただけで済ませた。

 微笑み返す若い刑事の横で、椅子に座っていた中年男が、渇いた笑みを浮かべてこちらを見送った。小楠の視線がはずれた瞬間、彼が「なんでお前だけいいタイミングで挨拶するんだよッ」と若い捜査員に掴みかかる様子を、真由は横目に留めて訝った。

「あの、警部? あの人たち、一体なんですか?」
「二年前から組んでいる刑事コンビだ。あの細いのはうちの古株で、実力はある男なんだが、L事件特別捜査係にいる『奴』の事を、ライバル視していてな……」

 小楠が小声でそう説明する様子を、その刑事コンビの中年男の方が、若い方の男に掴みかかったまま首をぐいと伸ばして窺った。