彼女は、ふっくらとした健康そうな顔を二人に向けると、皺を柔らかく緩めるように微笑んだ。

「こんにちは。お待ちしておりました」
「こんにちは。僕は宮橋と申します、隣の彼女が、あなたとお電話した橋端真由です。あなたが与魄カヨさんですか?」
「はい。私が、与魄カヨにございます」

 尋ねたい事がある、としか電話で知らされていなかったのに、カヨの笑みが少しだけ悲しげになった。彼女は、宮橋の隣にいる真由にも会釈をしたあと、彼に視線を戻して中に入るように勧めた。

 古い家の廊下は、足を踏みしめるたび小さく軋んだ。木材の色は褪せてしまっているが、やはり掃除はきちんとされて行き届いている。通路はこじんまりと造られていて、長身の宮橋は少々窮屈そうに肩身を狭めていた。

 カヨは、玄関から近い畳間に二人を案内し、冷茶をコップに注いで二人の前にそれぞれ一つずつ置いた。正座した宮橋は、真由自身から見ても更に長身に見えるせいか、「まるで外人さんみたいねぇ」と笑われてしまった。