「はいはい、分かってますよ。私は口を挟みませんし、助手としてしっかり大人しくしています。携帯電話に連絡が来たら、私が取ればいいんですよね?」
「よく分かっているじゃないか。それにしても、助手と言うと、まるでどこかの探偵に付き合っているみたいに聞こえるぞ」

 真由は、宮橋から音が消された携帯電話を受け取りながら、まさにそんな感じじゃないですかね、と胸の内で呟いた。自分の携帯電話もマナーモードに切り替えている間に、彼は引き戸を軽く叩いていた。

「すみません。先程に連絡をした宮橋と申しますが、与魄カヨさんはいらっしゃいますでしょうか?」
「はいはい、少しお待ちになって」

 引き戸の向こうから、細い声量の柔らかな声が聞こえた。

 しばらくもしないうちに戸を開けたのは、小柄な八十代くらいの女性だった。豊かな長い白髪を、後ろで一つに丸く束ねるようにしてまとめていて、ゆとりある柔らかなズボンと割烹着に似た上着という格好をしていた。小動物のように丸い瞳には、控えめな気性と人の良さを感じる。