カチンときた真由は、馬鹿ではないです、と反論しようと視線を戻したところで、口をつぐんでしまっていた。
正面を向いた宮橋の横顔には、少し困ったような、それでいてどこか泣きそうな微笑みが浮かんでいた。車は一見すると、荒々しく走行するように次々に前方車を追い越し続けていたが、まるでこちらに負担をかけまいとするように滑らかだった。
「――ありがとう」
ふと、宮橋が小さな声で言った。
彼に感謝されたのは初めてで、大人びた美麗な微笑は、横顔だけでもドキドキしてしまうくらいキレイだった。子供みたいに迷惑をかける普段の様子とギャップも覚え、真由はどう言葉を返していいのか分からなくなって「別に」と歯切れ悪く答えて顔をそむけていた。
どうして、ありがとう、なんて言われなくちゃいけないんだろう? よく分からないけれど、なんだか背中がむずがゆいような気がして落ち着かず、先程初めて触れられた眉間と額に彼の温もりまで蘇ってきて、意味もなくシートベルトをチェックしてしまう。
正面を向いた宮橋の横顔には、少し困ったような、それでいてどこか泣きそうな微笑みが浮かんでいた。車は一見すると、荒々しく走行するように次々に前方車を追い越し続けていたが、まるでこちらに負担をかけまいとするように滑らかだった。
「――ありがとう」
ふと、宮橋が小さな声で言った。
彼に感謝されたのは初めてで、大人びた美麗な微笑は、横顔だけでもドキドキしてしまうくらいキレイだった。子供みたいに迷惑をかける普段の様子とギャップも覚え、真由はどう言葉を返していいのか分からなくなって「別に」と歯切れ悪く答えて顔をそむけていた。
どうして、ありがとう、なんて言われなくちゃいけないんだろう? よく分からないけれど、なんだか背中がむずがゆいような気がして落ち着かず、先程初めて触れられた眉間と額に彼の温もりまで蘇ってきて、意味もなくシートベルトをチェックしてしまう。