小楠は真由の背中を「頼んだぞ」と小さく告げて押しやると、大きく息を吸い込んで、部下たちに指示した。

「連絡のあった少年の元に、三鬼たちを向かわせる! 急ぎ残りの少年たちを捜し出し保護にあたれ!」

 直前まで佇んでいた男たちが、途端に堰を切ったような慌ただしさで動き出した。捜査の指示を確認する者、課内の人間と急いで連絡を取る者など、小楠を中心に各メンバーが集まって作戦会議も始まる。

 真由はその様子を横目に、宮橋のもとに向かった。連絡先と住所の書かれたメモ用紙を受け取った彼の後ろ隣に立ったものの、直前のピリピリとした緊張感を覚えていたから、すぐに声を掛けられなかった。

 これから向かうんですかと確認をしていいものなのか、それとも『質問はするな』『指示に従え』というルールを守って、彼からの言葉を待った方が良いのか悩んで、随分高い位置にある美麗な横顔を見上げた。

 すると、視線に気付いたのか、彼が「ん?」とちょっと眉を顰めてこちらを振り返った。思わず反射的に一瞬身構えてしまった真由は、パチリと視線が合った一瞬後には拍子抜けして「あれ?」という声を上げていた。

 こちらを見下ろした宮橋は、先程の拒絶するような厳しい雰囲気も消え失せていた。まるで、なんだ、と問うように器用に秀麗な片眉をつり上げて、いつもの小馬鹿にした表情を浮かべる。