緊張に包まれた場に、困惑の色が不安を引き連れて広がっていた。彼らはL事件特別捜査係の存在を知っている面々なので、まるで現場の指揮を勝手に取るような宮橋の言動と行動を止めに出るような者もいなかった。

 真由は目の前を通り過ぎた彼が、女性捜査員からメモ用紙を受け取る様子を見ていた。ふっと肩を叩かれて、びっくりして振り返ると、そこには厳しい視線を宮橋に向けている小楠の横顔があった。

「宮橋を、絶対に一人で行動させるな。君は、彼のパートナーだ」

 低い声で命令されて、真由は小さな戸惑いを覚えた。数時間前から『L事件特別捜査係り』の人間なのだから、彼を一人にさせるはずがないのに、変な言い方だなと思った。

 すると、すぐそばにいた三鬼が「少年の保護に回ります」と短く言って、大股に歩き出した。その後ろを慌てて藤堂が追う。彼は宮橋の近くを通り過ぎたが、時間も惜しいと言わんばかりの早歩きで、目をやる事さえなかった。