「まるで俺らが保護して一緒に居たとしても、みすみす殺されるって言い方だな?」
「僕はそう言っている。物理的に、たとえこの署の中で保護したとしても『殺人犯』の行動は止められない。だから、もし殺害の確率を少しでも下げたいのなら、彼らを保護したら『狭い場所』には放り込まない事だ」

 宮橋は、そこで小楠を見やって「まだ確認しなければならない事があって、ハッキリとは言ってやれないが」と前置きして、こう続けた。

「恐らく『現時点までの段階であるのなら』、人の気配が多くある場所は少なからず効果はあると思う。死角になる場所を避けて、人の社会に囲まれたド真ん中に置く」
「――つまり、多くの人間が留まる場所に紛れさせるわけか。そうする事で、その『殺人犯』は今のところは動けない、という解釈でいいのか?」

 長年の付き合いから察したように、小楠は真面目に確認する。宮橋が「今のところはね」と、彼の台詞の一部を取って年を押すように繰り返したところで、近くにいた数年後輩の男性捜査員が「宮橋さん」と呼んで質問した。