緊迫した空気に呑まれて、真由は、ついプライベートの時の癖で「小楠のおじさん……」と呼んでいた。その蒼白な顔に目を留めた小楠は、冷静を努めて電話の向こうの彼にこう告げた。

「……そのまま、電車で待機していてくれ。すぐにこちらから人間を向かわせる」
『分かった。頼むから、見捨てないでくれ…………』

 声変わりをしたばかりの十六歳は、今にも泣きそうな声でそう縋った。

 小楠が顔を歪めて「全力を尽くす」と答え、受話器を置いた途端に、その場にいた他の捜査員たちの含めた人間の目が、それぞれの表情を浮かべて一斉に宮橋へ向けられた。

 すると、今まで我慢して黙っていたらしい三鬼が、掴みかかる勢いで宮橋へと距離を詰めた。

「説明してもらおうか。一体、どういう状況なんだッ」
「煩い声を出すなよ。あの少年が訴えてきた通り、彼らのグループ全員が『殺人犯』に狙われているのさ。今出来る事は、形ばかりにでも君たちの方で彼らを保護する事。けれど、残りのメンバーが助かるかどうかまでは断言出来ない」