『へ? ああ、まっちゃんは――曽嶺マサルと中富陸は、人の多いところにいるらしいけど…………ケンは分からない。あいつ携帯電話を捨てたみたいで、連絡が取れないんだ』

 その時、これまでずっと黙っていた小楠が、受話器を奪い取って怒鳴った。

「何故すぐ警察に連絡しなかったんだ!」
『しようと思ったさ! でもッ、なんて言えばいいんだよ!? 午前中にそっちに行っていたとして、あんたらは俺らの話を、さっきの奴みたいにちゃんと聞いてくれていた保証はあんのかよッ』

 小楠がぐっと言葉を詰まらせた。後ろから三鬼が手を伸ばして、その大きな肩を叩いてきたからでもあった。何も言わず普段通りの、冷静な表情でいる宮橋の横顔を盗み見て、怒鳴れる資格もないのだろうと察して肩から力を抜く。

 そばで見守っていた藤堂が「少年の方も、かなりきているみたいですし」と遠慮がちに言った。

「俺だって、今回のこの異様な事件も、一体何がどうなっているのか、宮橋さんとのやりとりを聞いてもちんぷんかんぷんです。でも、時間がないのは確かなんでしょう? もう四人も死んでいます。だから指示をください、小楠警部」