小楠は問いかける宮橋の言葉を聞くと、助けを求めて来た少年――亮にそれを伝えた。すると、電話の向こうから肯定するような喘ぎが上がる。

「どうする、宮橋?」
「待ってくれ小楠警部、今、考えてる」

 そう思案気に呟いた宮橋は、まだ電話番号を調べ上げていない女性捜査員の仕事ぶりを横目に見やり、「いいだろう。僕の方は、まだ少し時間があるしな」と口にしてツカツカと歩み寄ると、小楠から受話器を受け取って自身の耳にあてがった。

「君には、こちら側から寄越す大人と合流するまでは、しばらくそこで時間を稼いでもらう。そこで訊きたいんだが、まず交信手段は携帯電話で間違いないか?」
『あんたは誰だ? 一体何を知ってるッ?』
「僕は質問をしている立場であって、君の質問に一つ一つ答えるつもりはないよ」

 宮橋が、冷たくも聞こえる淡々とした調子で言った。すぐ隣で様子を見ていた小楠が「おい、相手は怯えきった子供だぞ」と囁いたが、無視してこう続けた。