休み時間は静かなもので、邪魔されない穏やかな空気が流れていた。ずっとこんな学校生活を送りたいと考えていたのに、どこか心が空っぽになった虚無感を感じていた。

 安堵はない、ただただ無心だった。

 何気なく空を見上げて、当たり前のように授業を受ける。そんな些細なものにでも動かされていたはずなのに、どうしてか今日に限っては、心に何も響いてこないでいた。ただ息を吸っていて、ひどく足元もふわふわとして現実感が薄い。

 同じ学校に通う二人の生徒が死んだという知らせがあったのは、昼休みの前だった。その後に、クラスメイトの一人も亡くなったのだと聞かされて、再び教室が騒然となった時も、智久はぼんやりと眺めていた。

 毎日のように自分を殴っていた生徒たちだったから、全く知らない仲というわけでもなかった。けれど死んだと聞いても、良い感情も悪い感情も感じなくて、まるで事前に死を知っていたような感覚も頭の片隅に湧くしまつで、どうして自分がそんな風に感じるのか分からないまま教師の報告を聞いた。

 午前中に死亡の知らせをもらった生徒のうち、公園で死んだと言う松宜俊平は、いつもこちらをからかっては面白がっていた生徒だった。強く暴力を振るう事はなかったが、リーダーの筒地山亮の隣に張り付いて、虐げられるこちらを鑑賞する事が好きだった。

 午後になって知らされた、どうやらカラオケ店で事件に巻き込まれて死亡したらしい、クラスメイトの西盛晃は、拳に自信を持っていた生徒だった。腹部に受けた右ストレートの拳は重く、いつも呼吸が詰まるような苦しさと口に広がる酸味があったのを覚えている。

 彼のパンチ力は、メンバーの中でも一番だった。ボクシング部の兄貴がいるのだと、彼はよく誇らしげに口にしていた。担任教師は、死亡時の詳細を語らなかったけれど、智久はどうしてか、『真っ先に自慢の腕を切断されてテーブルに落とされた』イメージを抱いた。