真由はびっくりしてしまって、慌てて小走りで彼の隣に並んで問いかけた。

「ちょ、待ってください、宮橋さん。今まさに進展があるココを放って、すぐ事情聴取に向かうんですか?」
「そうだ。それもあって、僕はここに一旦戻ってきたようなものだからな」

 それ以上の質問は拒否する、というように宮橋が歩みを速めて、パソコンに向かっている眼鏡の女性捜査員にこう言った。

「今すぐ、与魄智久の祖母の番号を調べて欲しい」

 彼女は困惑したように手を止めて、宮橋を見つめ返した。すぐそこに立った三鬼を見て、真由と藤堂にもチラリと目を向け、それから「分かりました、少し時間がかかりますから、待っていてください」とパソコンに向き直った。

          ◆◆◆

 智久の毎日は、中学時代からずっと、登校から下校まで痛みと煩わしい言葉に溢れていた。

 しかし、ただただ振り回される日々だったのに、今日はいつもと違っていた。彼にそんな世界を与えていた少年たちが、一時間目の授業が始まっても登校してこなかったせいだ。