「捜索が続いているN高校一年生の筒地山亮本人から、一一〇番通報で連絡が入ったそうです!」
「なんだと?」
「どうやら『自分を保護して欲しい』という連絡のようですが、かなり不安定になっているのか話をするのも難しい状態のようで。今、対応にあたっている者で、どうにか落ち着かせようと頑張っているみたいです」

 尋ねながら既に歩き出していた小楠が、「回線を繋げ」と指示しながら向かう。騒がしさが増した室内のざわめきを聞きながら、真由は藤堂と互いの丸い目を合わせたところで、ふと思い出して「あ」と口にしてポケットを探った。

「そう言えば、手帳をお返ししておきます」
「ああ、うっかり忘れられているかと思った」
「多分、もう手帳の存在を忘れているのは、宮橋さんだけかと思います」

 確認を促された以降、彼の口から手帳の存在を口にされていなかった事を思い返しながら、真由は藤堂の手にそれを返した。