「与えるに魂魄の魄を付けて、ヨタク。本来、名は魂と生き筋を縛るモノでね。与魄という字には、条件を与えて魂を留まらせる、という契約的な意味合いが隠されている」

 唐突に説明をされた藤堂が、なんと感想していいのか分からない表情で「うーん」と頬をかいた。

 真由は、宮橋の美麗な横顔を見上げて、率直な感想から尋ねる。

「漢字の意味合いに、何か意味があるんですか?」
「重要なのは名前だよ。一部の血族は、それぞれ『物語』を持っているからね」
「物語?」
「教訓みたいにある、お伽噺と同じさ。幼い子供の頭にも入るように、まるで一冊の絵本みたいに『昔むかし、あるところに』から始まるやつでね――、僕の考えが正しければ、彼は与魄家の人間として『成ってしまった』んだ」

 途中、どこか思い出すような目をした宮橋が、自身で気付いたかのように後半で声の調子を戻した。

 三鬼が少し苛々した様子で、「俺にも分かるように言え」と言った時、電話対応に追われていた男性捜査員の一人が「警部!」と叫んだ。