彼女は、仕方なしにそれ受け入れる覚悟を決めて、ここまで『オグシおじちゃん』を悩ませているらしい珍しい人間がいる事を不安に思いながら、上司に尋ねてみた。

「あの、私が組まされるとかいう『彼』って、一体どんな人物なんですか?」
「ウチの問題児だな。宮橋財閥の次男で、趣味で刑事をやっている変わり者だ」
「えぇぇ……。そんなの辞めさせたらいいじゃないですか。権力的な圧力を受けたかは知りませんが、それで彼一人のために係を立ち上げただなんて事実があったりしたら、私失望しますよ」
「いいや、彼はうちにとって『なくてはならない人間』なんだ」

 小楠は断言すると、真由を鋭い瞳で見つめた。立ち上がりざま窓の外へと顔を向けると、上司らしい口調で「真由君」と呼んだ。

「迷宮入りになっている不可解な事件が、年間どれだけ起こっていると思う?」
「不可解な事件、ですか……?」
「表沙汰にされていない、奇妙でおぞましい、まるで怪談じみた事件だよ」

 真由は少し考えてみた。冗談なのか本気なのか分からないが、慎重に答えてみる。