「目が真っ黒でバランスが悪い、気味が悪い、はたから見たら誰だか分からん。本当に私が知っているアレなのかと、疑うばかりだ」
アレ、という言葉を聞いて溜息がこぼれそうになった。蒼慶はいつも名前ではなく、こちらの事を「アレ」だとか「お前」だとか「貴様」と呼んだりする――まぁいいけどね、と雪弥は昔から変わらない兄の特徴の一つを思った。
そもそも、カラーコンタクト一つでこんなに言われるとは、予想外である。むんずと黙りこんだ蒼慶を見やって、「兄さん、あのですね」と声を掛けた。
「誰だか分からないなんてこと、あるわけないじゃないですか。この顔も背丈も変わっていないし、緋菜や亜希子さんだって、一目で僕だと分かって、これといってコンタクトについては指摘してきませんでしたよ。目の色が違うだけです」
キッパリと教えてあげたら、蒼慶が腕を組んで、鋭い瞳を真っ直ぐ向けてきた。
「それを取れ」
一言、彼が低くそう告げる。
アレ、という言葉を聞いて溜息がこぼれそうになった。蒼慶はいつも名前ではなく、こちらの事を「アレ」だとか「お前」だとか「貴様」と呼んだりする――まぁいいけどね、と雪弥は昔から変わらない兄の特徴の一つを思った。
そもそも、カラーコンタクト一つでこんなに言われるとは、予想外である。むんずと黙りこんだ蒼慶を見やって、「兄さん、あのですね」と声を掛けた。
「誰だか分からないなんてこと、あるわけないじゃないですか。この顔も背丈も変わっていないし、緋菜や亜希子さんだって、一目で僕だと分かって、これといってコンタクトについては指摘してきませんでしたよ。目の色が違うだけです」
キッパリと教えてあげたら、蒼慶が腕を組んで、鋭い瞳を真っ直ぐ向けてきた。
「それを取れ」
一言、彼が低くそう告げる。