相変わらず痛いところをついてくる執事だ。しかし、桃宮にそう約束したのは自分からであるのも確かなので、雪弥はその手前強くも言えず、視線を泳がせて頬をかいた。
「迷惑を掛けたのは、申し訳ないとは思っているんですけど、なんでぶつかってしまったのか、実はよく覚えていないんですよねぇ……」
どうしてだっけ、と、雪弥は口の中で呟いた。宵月が目を細めて何か言いかけ、不意に口を噤む。それから、ある方向へ身体を向けて恭しく声を掛けた。
「蒼慶様」
その声を聞いて、雪弥は思考を中断した。恐る恐るそちらへ目を向けてみると、階段の上に兄の蒼慶が立っていた。
忌々しげにこちらを見下ろしてくる視線を受け止めて、思わず口許が引き攣るのを感じた。宵月が一礼して後ろへと下がる中、蒼慶が厳しい非難を浴びせるような表情で階段を降り始める。
ツカツカと足早に向かってくる兄を見て、雪弥は慌てて言い訳になりそうな言葉を探した。蒼緋蔵家の遠縁であり、本日来訪予定があったという客人の桃宮一家に迷惑を掛けたのは事実なので、まずは謝ろうと思った。
「迷惑を掛けたのは、申し訳ないとは思っているんですけど、なんでぶつかってしまったのか、実はよく覚えていないんですよねぇ……」
どうしてだっけ、と、雪弥は口の中で呟いた。宵月が目を細めて何か言いかけ、不意に口を噤む。それから、ある方向へ身体を向けて恭しく声を掛けた。
「蒼慶様」
その声を聞いて、雪弥は思考を中断した。恐る恐るそちらへ目を向けてみると、階段の上に兄の蒼慶が立っていた。
忌々しげにこちらを見下ろしてくる視線を受け止めて、思わず口許が引き攣るのを感じた。宵月が一礼して後ろへと下がる中、蒼慶が厳しい非難を浴びせるような表情で階段を降り始める。
ツカツカと足早に向かってくる兄を見て、雪弥は慌てて言い訳になりそうな言葉を探した。蒼緋蔵家の遠縁であり、本日来訪予定があったという客人の桃宮一家に迷惑を掛けたのは事実なので、まずは謝ろうと思った。