「先程は、本当に申し訳ございませんでした」
急きょ服を着替えた桃宮勝昭(ももみやかつひこ)に、雪弥はまだ少し湿っている上着のスーツをつけたまま、深々と謝った。宵月が風呂に入って着替える事を勧めたが、それを断って桃宮家が応接間にやってくるのを待っていたのである。
黒い長ソファの中央に腰かけた桃宮勝昭は、少し困ったように柔らかく笑って「いいんですよ」と言った。シャワーを借りてスーツも替えていた。ドライヤーをあてたばかりの白髪混じりの髪は、整髪剤を付け忘れたのか、ふわふわとしている。
「どうしても金魚と一緒に来たいといった、娘の我がままを聞いてしまったのは、私ですから。金魚も無事でしたし、部屋に用意して頂いた水槽の中で、元気に泳いでいますよ」
「あなたこそ大丈夫? 風邪を引かないうちに、乾かしたほうがいいわ」
隣にいた桃宮婦人が、ぶつかってきた雪弥の体調を気遣った。中学一年生になったという娘のアリスも、少し落ち着いて反省したように肩を竦めとおり、「金魚ちゃんなら、大丈夫です」と小さな声で言って、恥ずかしそうに視線をそらした。
急きょ服を着替えた桃宮勝昭(ももみやかつひこ)に、雪弥はまだ少し湿っている上着のスーツをつけたまま、深々と謝った。宵月が風呂に入って着替える事を勧めたが、それを断って桃宮家が応接間にやってくるのを待っていたのである。
黒い長ソファの中央に腰かけた桃宮勝昭は、少し困ったように柔らかく笑って「いいんですよ」と言った。シャワーを借りてスーツも替えていた。ドライヤーをあてたばかりの白髪混じりの髪は、整髪剤を付け忘れたのか、ふわふわとしている。
「どうしても金魚と一緒に来たいといった、娘の我がままを聞いてしまったのは、私ですから。金魚も無事でしたし、部屋に用意して頂いた水槽の中で、元気に泳いでいますよ」
「あなたこそ大丈夫? 風邪を引かないうちに、乾かしたほうがいいわ」
隣にいた桃宮婦人が、ぶつかってきた雪弥の体調を気遣った。中学一年生になったという娘のアリスも、少し落ち着いて反省したように肩を竦めとおり、「金魚ちゃんなら、大丈夫です」と小さな声で言って、恥ずかしそうに視線をそらした。