そんなふうに思われたくもない。激情のように強い嫌悪感が込み上げた。小さく聞こえ続けているぼそぼそとした話し声に、胸の内側で一気に苛立ちが膨れ上がって、怒りに似たドス黒い感情が渦巻くのを感じた。

 やっぱり、こんなところにいたくない。

 そう思った雪弥は、弾かれたように立ち上がっていた。振り返って目が合った男達が、驚いたようにしてそそくさと歩き出すのが見えて、ふと、文句の一つでも投げてやりたくなった。

 けれど口を開こうとした直後、ハッとして表情を強張らせた。雪弥は、咄嗟に自身を抱き締めると、両腕で力いっぱい抱えこんで背中を折り丸めた。

「どうなさいました、雪弥様ッ」

 焦るような宵月の声が聞こえたが、雪弥は答える余裕などなかった。強い心地悪さが起こり、今すぐにでも何かを壊したい衝動に駆られて、両手が激しく震えそうになるのを堪えるので精いっぱいだった。

 ごうごうと血が全身を巡る音が、耳元で警告のように鳴り響いている。暴れ出したいほど膨れ上がる感覚に、今にも理性が押し潰されそうになる。