新聞には、財閥の一人である榎林の死を悲しむ、数多くの著名人の名が並んでおり、その記事の隅に『夜蜘羅』と記載された一枚の写真があった。その姿が、前回の仕事の最中、奇妙な化け物と闘わせてきたサングラス男と重なった。

 ひどく大柄なのが、大きな顔と太い首で分かった。黒くはっきりとした凛々しい眉、彫りが浅く頬張った顔は、生粋の日本人というよりは東南系で、鋭い眼差しは自信と好奇心が溢れているように感じる。

 剛毛な長い黒髪を後ろで一つに束ね、面長だがひきしまっている凛々しい顔。笑った顔も、記載されている実年齢の五十三歳より、はるかに若く見えた。

 多分、こいつだろう。

 雪弥は、まじまじと写真に目を留めてから、『夜蜘螺』という変わった名の男の事が載っている文面を、急くように読み進めた。

 夜蜘羅は、中国にある巨大財閥の血縁で、二十年前に日本で立ち上げた会社が、未だ成長中だという。仕事に熱く、独身のまま突き進む彼は、今財界でも注目されているらしい。強い探究心と新しい発想力があって、人望も厚く、企業全体を盛り上げてくれる事を期待する、と、その記事には書かれていた。