「やっぱり、この状況ってすごく間違っているよ」

 ようやく驚愕の事実に気付いた、と言わんばかりに雪弥は発言した。しかし、話を続ける亜希子達には、聞こえていないようだった。

 彼のすぐ隣に立っていた宵月だけが、「ちっとも間違っておりませんよ」とフォローしつつ、新しい紅茶を注ぎながら「ですが」と言って続ける。

「男性がこの茶会に入るのは、ここでは初めての事です」
「ほらなッ、だからやっぱり間違ってるって!」

 そのちょっとした悲鳴みたいな主張に驚いて、女性陣が「どうしたの、お兄様」「どうしたのよ、雪弥君?」と、二人同時にこちらを振り返ってきた。

 雪弥は心の叫びをぐっと堪え、どうにか冷静に伝えるべくして口を開く。

「だから、僕は兄さんと話をしに来ただけであって――」
「蒼慶お兄様には付き合って、私は駄目だなんて、そんなこと言わないわよね?」
「そうよ。兄弟同士で難しい話し合いしかしないなんて、寂しいじゃない」