おかしいな。僕は、どこで何を間違えたんだろうか。

 雪弥は、遠い目で思い返した。はじめに美味しい紅茶を仕入れてあると言ったのは、優秀で憎たらしい執事の宵月だった。続いて、先に食べていたケーキが美味しいと緋菜が言い、「じゃあ一緒にお茶にしましょうよ」と締めくくったのが亜希子だ。
 ああ、なんだ亜希子さんか、と雪弥は薄ら笑みで視線をそらした。口に広がる甘さは、確かに一流パティシエの味だが、雪弥は先に食べた二つのケーチの味すら覚えていなかった。それほど、受け流されるようにして、ぼんやりと食べ進めている。

 緋菜が弾けるような可愛らしい笑みを浮かべ、亜希子が品良く笑い、そうやって女性同士の会話が続いていく。

 雪弥は紅茶を半分ほど飲んだ後、向かい側で続くそんな光景をしばらく観察した。一つ一つ、改めて慎重に考え直してみると、次第に自分の肩が落ちていくのが分かった。カップに残っていた紅茶を飲み干すと、今度は確信してぎこちないながら頷き、結論を口にする。