大きなテラステーブルにて、ケーキを食べながら華やかに談笑しているのは、女性陣の亜希子と緋菜だ。そのテーブルの上には、色取り取りのケーキと、良い香りがする紅茶が並べられていた。

 彼女達は、会話が途切れる事なく、こちらがよく知らない世間話を続けている。見張るようにすぐそばに立つ宵月の隣で、雪弥は複雑な表情で、ちまちまとケーキをつついていた。

「……この状況ってさ、なんか間違ってない?」
「え? お兄様、何か言った?」
「ううん、ちっとも、全然……」

 振り返った緋菜に、雪弥は言葉を濁した。亜希子と彼女が、普段と変わらずといった様子で紅茶タイムを楽しんでいる様子を見て、こうして変だと感じている自分こそが間違っているのだろうか、と悩んだりする。

 数十分前、兄に書斎室を追い出された雪弥は、階段下で亜希子を見つけた。どうだったのと尋ねられたので、提案を見事に断られた、とだけ簡単に話した。そうしたら、気付くと彼女達の紅茶タイムに付き合わされていたのである。