「僕は、蒼緋蔵家の権利だったり、そういうのは何一つ求めていません。兄さんの立ち場を脅かすつもりだってないし、蒼緋蔵家の運営について口を挟む気も全くないんです。それでも納得してくれないのであれば、僕から蒼緋蔵の名前を完全に取り去って欲しい。父さんは、僕の養育費のためにとも言っていたけれど、もう必要ないはずだ」
家族だから家名を、という理由があったのは知っている。けれど、幼かった頃と違って、雪弥は離れていたとしても『家族』という形がある事を理解していたから、名字への未練はもうなかった。
肌を刺すような室内の空気に耐えきれず、一人の男が息を呑んだ。静まり返った室内で、蒼慶が机の上で手を組んで口許に押し当てる。その顔には、今にも机をひっくり返して暴言を吐きそうな表情が浮かんでいた。
「それが、お前の答えか?」
しばらく経った後、蒼慶が低く言った。ソファに腰かけている男達が、チラリとその顔色を窺い、再び雪弥へと目を向ける。その探るような眼差しには、どこか焦りも浮かんでいるように見えた。
家族だから家名を、という理由があったのは知っている。けれど、幼かった頃と違って、雪弥は離れていたとしても『家族』という形がある事を理解していたから、名字への未練はもうなかった。
肌を刺すような室内の空気に耐えきれず、一人の男が息を呑んだ。静まり返った室内で、蒼慶が机の上で手を組んで口許に押し当てる。その顔には、今にも机をひっくり返して暴言を吐きそうな表情が浮かんでいた。
「それが、お前の答えか?」
しばらく経った後、蒼慶が低く言った。ソファに腰かけている男達が、チラリとその顔色を窺い、再び雪弥へと目を向ける。その探るような眼差しには、どこか焦りも浮かんでいるように見えた。