自分にその質問は許されていないだろう。そう分かって、視線をそらして椅子の背にもたれかかった。そして、一つの仕事をやり終わるごとに、ほぼ人の出入りがない『この部屋』にやってくる青年エージェントをじっと見つめた。

 この青年は、『4』の数字を与えられているエージェントだった。

 心優しくて裏表がなく、この息苦しい職場の中で、唯一心安らげる雰囲気を持っている――そんな人だ。それでも、研究員としてこの階の最高責任者としている彼女は、そんな青年が『碧眼の殺戮者』と呼ばれている事を知っていた。

 五年前の就任時から、彼女はナンバー1に任命を受けて、調査のため彼の実技演習なども見てきた。冷静沈着な美しい碧眼で捉えてすぐ、『人工』の標的をあっという間に壊していく。それはエージェントとして素晴らしい実力だったが、その標的が『生き物』に変わると、違う一面を見せた。

 その碧眼は『生きた標的』を捉えると、残酷なほど冷やかな殺意が満ちる。躊躇なく的確に息の根を止めていく様子は、生命がなんであるのかも思わないかのような殺戮を展開し、ぞっとするほどに容赦がない。