現当主と同じ赤みかかった少しだけ癖のある髪に、ラインの入った高級スーツから覗くすらりとした長身の肢体。顔立ちだけでなく、ちょっとした仕草の何もかもが西洋の貴族を思わせたが、彼の背負う威圧感は、室内に更なる緊張した空気を溢れさせている。

 久しぶりだ、という言葉を掛ける事もなく、兄弟はしばらく見つめ合っていた。無愛想な蒼慶が、秀麗な眉を顰めるのを合図に、雪弥は会釈をして緊張の感じられない表情で口を開いた。

「お話しの途中、失礼します。本日は、先日に電話で伺った、あなたの提案を『お断り』するべく参りました」

 ほんとはこのタイミングで入りたくなかったんだよ、という気持ちが滲んだほぼ棒読みの言葉が、静まり返った室内に響き渡った。

 その途端、室内の緊張が一気にぴりぴりと張り詰めた。こめかみにピキリと青筋を立てた蒼慶が、「ほぉ?」と問う低い呟きを上げて、僅かに片頬を引き攣らせる。

 四人の男達が、今にも気圧されて死にそうな顔で小さく震えた。雪弥は彼らからやや遅れて、兄がひどく怒っている事に気付いた。